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外国人労働者の退職手続きについて~日本人の手続きとの違いは?~


02 Apr, 2021

外国人労働者の需要が大きい昨今では、より良い労働環境や報酬を求めて、外国人労働者も自由に職を選び、転職をすることが一般的になっています。特に外国人は日本人よりも、転職に関して合理的な思考を持っています。現在の仕事と比べて条件が良ければ、スキルアップのために転職を繰り返すことは通常の行いであるようです。

そのため、会社は外国人を雇用する以上、長期的に勤務し続けるとは限らないので、いつでも退職の手続きが取れるように、事前に外国人の退職手続きについて知識を学んでおくことも重要です。

外国人を採用し育成することと同様に、退職手続きを行うことも雇用した会社の役目です。いざというときに慌てないためにも、この記事を読んで退職手続きの流れや必要な書類について認識しておきましょう。

退職手続きの流れ

退職手続き

外国人労働者の退職手続きは、基本的には日本人の退職手続きと同様の流れで行います。

下記の項目はどの会社も共通で行う手続きです。

・健康保険の被保険者証の回収
・社会保険の資格喪失手続き
・雇用保険の離職票の交付
・源泉徴収票の交付
・住民税で支払わなければならない残額がある場合の手続き

退職時に、下記のような会社独自のルールを設けている場合は、ルールに従って手続きを行います。
・制服などの貸与品の返納
・業務上の引継ぎ
・会社の守秘義務を遵守するための誓約書の提出

外国人に限ったことではありませんが、退職は労働者の自由であることが民法第627条で定められています。雇用期間を設けていないのであれば、労働者はいつでも解約を申し入れることができます。解約の申し入れから2週間が経過すると雇用は終了します。そのため、会社や雇用主は外国人労働者が退職を申し出た場合、2週間前であれば退職を受け入れなければいけません。

外国人労働者特有の退職手続きについて

退職手続き

外国人労働者特有の手続きとして、以下の2点が必要になります。

雇用保険被保険者資格喪失届
日本人と同様に、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」の届け出を行います。

ただし、外国人労働者の場合は、「資格喪失届」の備考欄に外国人の国籍、在留資格、在留期間を記入します。これらを記載した雇用保険被保険者資格喪失届を届け出ることで、入国管理局への届け出が免除されます。記入は出入国管理及び難民認定法第19条17項に定められていますが、努力義務とされているので、記入漏れがあったとしても罰せられることはありません。

退職証明書交付
外国人特有の退職手続きを行う上で、必ず用意しなければならないのが「退職証明書」です。

退職証明書は、公文書ではないので形式は統一されておらず、会社の任意の書式で構いません。しかし、記載事項として「従事した業務や職務内容」「地位(社内の役職)」「在籍期間」「賃金」「退職の事由」を記入します。従事した業務や職務内容について記入する際には、在留資格の申請時に記入した内容と相違がないか確認しましょう。

退職証明書を記入する際の注意点は、退職者が請求していない事項について、それが「退職の事由」や「賃金」などに該当する場合であっても、記入することは禁止されていることです。これは労働基準法第22条第3項で定められています。万が一、外国人労働者の勤務態度の悪さや素行不良が理由で解雇に至ったとしても、本人が解雇事由を記載しないことを希望するのであれば、記入することはできません。

退職証明書は、就労資格証明書の交付や在留期間の更新、在留資格の変更の際に添付資料として、入国管理局に提出します。離職票とよく似ているので、混同しないように注意しましょう。

外国人本人が行う手続き

退職手続き

外国人は退職をした際に、自分で行わなければならない手続きについて熟知していない可能性があります。外国人本人が行う手続きは1つのみですがとても重要な手続きなので、ひと言声をかけてあげましょう。

契約機関に関する届出
就労ビザを取得して仕事をしていた場合、退職をした際には外国人本人が「契約機関(所属)に関する届出」を、入国管理局に届け出なければいけません。これは、出入国管理及び難民認定法第19条の16第2号で義務付けられています。届け出の期限は契約(所属)機関との契約が終了してから14日以内なので、早めに届け出を行うことを推奨してあげましょう。

入国管理局で直接届け出をすることもできますが、郵送やオンラインによる届け出も可能です。必要書類は「届出書」と「在留カード」の2点です。なお、郵送で手続きをする場合は、在留カードの原本ではなく、コピーしたものを郵送するように伝えましょう。

契約期間に関する届出の手続きを怠った場合、次に在留資格を申請する際、審査に対してマイナスの影響を及ぼすこともあります。また、届出をしなかった場合は20万円以下の罰金、届出に虚偽の記載があった場合は1年以下の懲役、または20万円以下の罰金という刑事罰を受ける恐れもあります。いずれにしても、届け出を怠ることは、今後の生活で不利益を被るということに注意しましょう。

外国人が帰国する場合の手続き

退職手続き

外国人が退職後に帰国する場合は、これまで支払った厚生年金の一部を「脱退一時金」という形で請求できる場合があります。脱退一時金とは、短期的に滞在する外国人を対象に、保険料の掛け捨てを防ぐために、厚生年金保険から支給される一時金のことです。

脱退一時金を受け取るには、下記の要件を満たしている必要があります。

・厚生年金の支払期間が6か月以上あること
・老齢基礎年金などの受給資格期間を満たしていないこと

なお、脱退一時金は出国後2年以内に請求しますが、請求の際には「年金手帳」が必要になるので捨てたり、なくしたりしないよう保管しなければならないことを伝えます。

退職後の転職活動について

退職手続き

外国人が退職することになった際は、転職先について尋ねてみましょう。その理由は、正当な理由がないにも関わらず、在留資格の活動を行わないと認められた場合、ビザが取り消されることにあります。

外国人は次の転職先が決まらないうちに、退職してしまう事例は多いようです。また、就労ビザが異なる職種へと転職する場合に、在留資格の変更手続きが必要だということを知らずにいる可能性もあります。

外国人が退職を申し出た場合は、転職活動を行っているか、転職先が決定しているかという声かけをしてあげましょう。

まとめ

退職手続き

外国人が退職をする際の手続きで、日本人の退職手続きと異なる点は、以下の2点です。

・「雇用保険被保険者資格喪失届」の備考欄に、外国人の国籍、在留資格、在留期間を記入する
・退職証明書を交付する

外国人の退職に伴い、会社側が特別に行う手続きは特に難しいものはありません。しかし、外国人本人にとっては、持ち合わせる知識が少なかったり、ましてや手続きを怠った場合に罰則を受けたりすること知らない可能性もあります。

これまで会社のために尽力を尽くしてくれた外国人のために、会社が最後にできることとして、外国人本人が行わなければならない手続きや転職についても、気遣いのひと言をかけてあげましょう。

退職するにも関わらず、最後まで気にかけてくれた会社に対して、外国人は良い印象を持つでしょう。外国人同士で「あの会社はとてもいい会社だった」との口コミが広がり、より良い人材の確保につながるかもしれません。

(画像はPixabayより)